ドラマ「天国と地獄」最終回 ひとりで罪を被ろうとする日高、それぞれの正義の元に真実を明らかにしようとする彩子と河原…その結末は!?

ついに最終回でした。
ただミステリーとしては1つ前の9話で最終回だったので、ここは長めのエピローグといった感じ。
真犯人が死亡して事件のことを直接語れるのは日高だけ…。しかし当の日高の供述は
「3件の殺人は全部自分がやりました」というものだった。

ドラマ「天国と地獄」最終回のあらすじはこちらから

では最終回の前に真相のほとんどが語られた状態で何をやったかというと
「殺人は自分がやった」という日高(高橋一生)の供述を崩すために彩子(綾瀬はるか)が奔走し河原(北村一輝)が問い詰める、これを1時間。
これは”謎”好きの自分には少々残念だった。
おそらくサスペンスを考察して見るタイプの人は、このドラマの終盤はあまり楽しめなかったのではないかと思う。自分もわりと一人の探偵になりきり登場人物よりも先に真相を見抜いてやろうと息まきながら見るので、伏線と思われるような演出のあちこちに引っかかった。

自分がこの最終回をあまり評価しないのは、伏線の回収が足りないからとかではなく、登場人物たち(特に真犯人)に悪意がなかったから。
1話の殺人事件の始まり。この凄惨な殺人で始まるミステリーを気に入っていた。そしてその殺し方は、犯人は相当に強い”悪”を持った人物だと感じさせた。ところが真犯人である東朔也は根は善人そうだし、犯行の手口は完全な模倣。それに自分の犯行は必要悪(罪にはなるが世のためには善行)であると信じているようだった。殺人シーンの描写が1つもなかったせいかもしれないが、どうも普段の表情や言動からはあんな猟奇殺人を犯すイメージは持てない。
恐らく東朔也にとって本当に不幸だったのは、先に生まれたことでも父の事業が失敗したことでもなく、クウシュウゴウの漫画を拾ってしまったことではないだろうか。あれがなければ犯罪など犯さず可哀そうな人生だが真っ当に生きて死んでいただろう。

そして弟の日高陽斗の方も死体をゴルフクラブでぶっ叩いて笑顔で動画撮ったり、殺人事件の現場で冷静に証拠をひとつも残さず掃除をしたりと、十分なサイコパスの資質を持ってはいるんだろうけどいい人すぎる。さすがに兄を守り彩子の立場を守り、死刑になってもいいから殺人の罪を全部自分で被るというのは庇い過ぎじゃないかと思う。

河原も事情聴取でさっさと日高の犯行にして自分の手柄と警察の面子を立てようとしているのかと思いきや、実は日高の口から真相を語らせようと追及していたのだった。まぁ河原はダーティではあったけど根はいい刑事なんだろうけどね。
最終回の前までは彩子を執拗に追い続けて手錠までかけた敵役の存在が、「目指すものは望月と同じ」一転彩子と共同戦線というかたちで真相を追い求めるというのは終盤の見せ場になっている。

まぁこのようにあれだけの残酷さの事件の最後で本当の悪意を持った人物が出てこないのはサスペンスとしては温く感じるのだけど、逆に言えばヒューマンドラマとしては大きなテーマをもってしっかりと脚本は書かれていると思う。特にタイトルである『天国と地獄』。これは最初は当然入れ替わった彩子と日高のことだと思うが、終盤になって日高と東朔也のことでもあるとわかる。
ただそれでもこの物語の根幹は日高に双子の兄がいたこと、殺人は兄がすべてやったこと、日高は兄を止めようとしていた、という部分でありそこが明かされる7話から8話にかけてがピークであることは否めない。

それともう一つ、自分にはこのドラマを好意的に受け入れがたい理由がある。
それは「男女の入れ替わり」があること。

なぜこれがだめかと言うと、途中ではっきりとナレーションで彩子が言っていた「わたし達の魂は入れ替わった」と。
そうなんです、わたしは魂は存在しない派なんです。なのでタイムリープとか非現実的なもの全部がだめではなくて魂だけはちょっと苦手かな、という感じ。1番気になってしまうのが魂入れ替わっても記憶はそのままということ。つまり記憶は脳に保管されてるんじゃなく魂というものに一緒にくっついてるというのか。なぜ彩子はナッツで死にかけたように体質と魂はリンクしたのに脳の記憶とリンクしなかったのか。
当然フィクションだしドラマなんだから入れ替わっても記憶もその人物になってしまったら視聴者は何のこっちゃ分からない。つまりせっかくの入れ替わりで状況が呑み込めずあたふたする演出ができないっていうのは分かる。だけど一度矛盾が気になってしまうと、その後も非合理的なものも非科学的なものもぜんぶ受け入れなければいけないという気持ちだとなかなか思うようには楽しめない。

それと男女が入れ替わった時の演技。
もちろん高橋一生さんはすごく中身が女性になったことを上手く演じてたと思うし、立ち姿や表情といった見た目だけで中身が女性になっていると分からせるのはすごいと思う。
だけどよく言うオカマの人って女性よりも女性っぽいというけど、どうしても分かりやすく中身の入れ替わりを表現しなきゃいけないので、必要以上に女性っぽくそれが最初に見せた男勝りな望月彩子とのキャラと合わなく感じた。それに声もトーンを上げて喋るのでどうしても違和感を感じた。

あとは男女の入れ替わりだとどうしてもコメディーチックになる。最後の最後があれだったのもちょっと残念だったし、古くさい演出(間違って女湯に入っちゃったとか)も要らなかったかな。
これはあくまでも自分がドラマを見る上での好みの話だけどね。

 

この天国と地獄は最終回の視聴率は20%超えってことで多くの人に楽しんでもらえたようです。
人格の入れ替わりという難しいことに挑戦したわりに辻褄が合わない部分は少なく上手くまとまっていたんでしょうね。

主演の綾瀬はるかさんや高橋一生さんはもちろんのこと、陸を演じた柄本佑さんもまたどこかでこんな掴みどころのない人物を演じているところを見たいなと思いました。

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