歩道橋から落ちた彩子(綾瀬はるか)と日高(高橋一生)。
「よし!もどった」2人は元の姿に戻っていた。
しかしすぐに逮捕はしない彩子。実は殺人に関しての真犯人は東朔也だと分かっていて、日高はそれを隠そうとしているだけど理解。そして東朔也と日高を二人一緒に捕まえるため、日高と共に奄美大島へ向かおうとする。
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彩子と日高は八巻(溝端淳平)から服や警察のバッヂを借りて包囲網を抜ける。東朔也と一緒にいる陸(柄本佑)との話で東朔也が奄美大島へ行こうとしていることが分かったので追いかけるためだ。
その間、八巻には日高のクレジットカードを持たせ、仙台へと行かせる。携帯電話が壊れてるいま、警察はクレジットカードの履歴から日高の居所を特定するだろうと読んでのことだ。
警察がこの八巻の動きに喰いつく中、ひとりだけ彩子の偽装工作だと見抜く男がいた。河原(北村一輝)である。
河原は八巻が仙台へ移動していることを察知し、日高のカード履歴はアリバイ工作だと読む。それだけではない。兼ねてから望月彩子と日高に何らかのつながりがあると睨んでいた河原は無断で彩子のアパートを家宅捜索。ベッドに隠してあった証拠品のサンプルQや皮手袋、暗闇の清掃人Φなどを見つけ出してしまう。
さて、彩子と日高が東朔也を追う途中、日高が兄である東朔也との出会いや事件がどう起きて、事件にどう関わったかを告白してゆく。
最初に東朔也と再会したのは、会社社長と清掃員として。この時は自分の兄だとは気づかなかったが、真面目な清掃員だったので洗剤のモニターをお願いしたことをきっかけに少しずつ親しくなっていったという。一方で東朔也の方は日高陽斗が生き別れた弟だと知っていたようだ。
気づいたのは例の歩道橋で飲み直した時、酒瓶を渡す東朔也の手のひらにホクロがあった。
酒の瓶と子供の時にもらった歯と自分の髪の毛でDNA鑑定をしてもらい、兄弟であることが判明した。
2人が兄弟であることが分かった日高は、東朔也とじっくり話す必要があると思い奄美大島へ旅行へいこうと誘った。約束はしたが東朔也は旅行にいけなかった。結局、奄美大島へは日高ひとりで行ってきた。その時、自分を東朔也と名乗ったのはよく分からないが奄美大島には兄が行ったことにしたかったらしい。
東朔也は旅行に行けない理由を妻が倒れたからと言ったが結婚しているということ自体嘘だった。実は東の父(つまり日高の実父でもある)が認知症になり世話をしながら一緒に暮らしていた。それが東朔也が父に暴行をされ、つい突き飛ばすと階段から落ち死んでしまった…。
日高はその後、歩道橋で再会する。その時東朔也からガンを患っていてもう6ヶ月ほど生きられないことを聞かされる。日高は二人は兄弟なんだから苦労は分かち合おうと治療の支援を申し出る。それを受けて東朔也からあのセリフが出てくる
「おれ、クシュウゴウになりたい」
そこで”暗闇の清掃人Φ”という漫画を見せ、これを書いた人物が実際に殺人も犯していたとその証拠写真も見せつける。これで1番最初の事件については東朔也ではなく、初代のクシウシュウゴウである暗闇の清掃人Φの書き手である十和田元(松尾愉)の犯行であることが確定した。
しかし暗闇の清掃人となってこの世にいない方がいいやつを殺したいという申し出を到底受け入れられない日高に、胸倉をつかんであのセリフ
「15分だ!!お前が15分先に生まれてくりゃ お前の人生は俺のものだった!!」
その時はそうやって別れたが、ある日、日高は歩道橋の壁に書かれた赤色の“2”という数字を見つける。
暗闇の清掃人の漫画にならい、数字の2は誰かを殺す予告だと勘づいた日高は、リストの中から田所仁志を見つけ現場へと急行する。しかし兄の犯行を止めたかった日高だが田所はすでに殺されていて、凶器の石やサンプルQが清掃服とともに置いてあった。それは暗に共犯になるか兄を裏切り通報するか選べという東朔也からのメッセージのようだった。
通報することはできずサンプルQで現場の血を拭き証拠隠滅と言う形で共犯になることを選んだ日高。
ひとしきり犯行時のことを話したあと、船上で再会する4人。彩子と日高、それに東朔也と陸が同じ場に居合わせることになった。
何でここにいるんだと日高陽斗を見て驚く東朔也。そしてその東に問答無用で殴りつける彩子。
「アンタはクシュウゴウなんかじゃないんだからね!ちゃんと居るんだからね。アンタのこと好きで、心配して、そうやって守ってやろうっていう人間が!」
激昂する彩子。
日高の話を全て聞いて、どれだけの思いをもって兄の東朔也をかばおうとしていたか、犯罪を止めようとしていたか、その思いの強さを痛いほど分かったのだろう。だからこそ東朔也がたとえ身の上が不幸であったとしても、その弟の思いを無為にするような殺人をすることに腹が立ち殴られずにはいられなかったのだろう。
容態の悪い東朔也がフェリーの船室で横になりながら今度は日高と二人きり。事件の真相を語り始める。
久米邸の前に現れてた男はやはり東だった。日高(中身は彩子だが)の姿を見て引き返し、警察にタレこんだと思い自分のひとりの犯行を思わせたくて急遽ターゲットを変えたらしい。
現場に日高の乳歯が落ちていたことは、東朔也も気づいてはおらず、急に発作が起き薬を飲んだ時に乳歯をその場に落としてしまった。ただそれだけのことだった。
「あんな大事なもの落としちまうなんて…」と言う割には、小銭入れに薬と一緒に歯をダイレクトで入れとくなんて今までよく無くさなかったと思うくらい雑な扱いではある。
朝になり、船を降りる前に兄と二人で逮捕されることにします、と言う日高。彩子は無罪になることを提案するが、日高はそれを拒む。
ところが船が到着する直前になって東朔也の容態が急変。陸が懸命の心臓マッサージをするも東朔也は死んでしまう(おそらく死亡は確定)。
どうしても彩子に犯人を匿うなど刑事として不利にならぬよう守りたい日高。フェリー到着と同時に警察が乗り込んできたことを知り、苦肉の策としてナイフを手に取り彩子を脅してみせた。人質になった彩子の首にナイフを押し付け警察を威嚇する日高。
「下がれぇぇぇ!!」
あくまでも彩子が刑事としての仕事を全うしてるように見せたい日高。逃走し彩子にそのあとを追わせるが、はじめから二人には秘密の関係があると勘づいていた河原だけは誤魔化すことができず、彩子は船上で手錠をかけられてしまう。
と、いうのが9話のストーリー。印象としては事件の真相を丁寧に説明させていったという感じ。それも日高と東朔也が交互に自分語りをする形式だったのよりきれいにパズルのピースが埋まるような展開だった。前話の感想でも書いたが大方事件の全容は予想通りでもう謎らしい謎も残ってはいないだろう。むしろ最終回の前にこれだけきれいになぞ解きを終わらせてしまって、最終回で見せるべき内容が残っているのかなと思うほど。
しかし今回は物語の中盤でかなり見当違いな考察をしてしまった。
考察系のサイトや動画も見たがみんな細かい演出を伏線かもしれないと引っ掛かり過ぎて自分から迷路の方へ進んでしまっていったような感じに見えた。
結果だけ見てしまえば
犯行は東朔也(と本家のクシュウゴウ)だけ。東朔也の殺人は模範。日高は犯行を止めようとしていて、証拠隠滅だけ。入れ替わりは彩子←→日高のみ。八巻は本当にただのヘタレだった。陸は便利屋の仕事をしてただけだった。田口浩正と浅野和也は本当にチョイ役だった。階段から落ちた爺さんは物語と特に関係なかった。手紙はラブレターじゃなかった。
と、いろいろあったが多くは事件を複雑に見せるための演出上のミスリードだ。
まずこの事件の真相は、日高に双子の兄がいたこと。そしてその兄が殺人の実行犯であったこと。これが1番の視聴者に驚きを与えるポイントになる。そしてそのことをより効果的に見せるためには日高がサイコパスの殺人者であると思わせる必要がある。加えて日高自身も兄の疑いを自分の向けるために警察や彩子に対してミスリードを仕掛けていた。言わば二重のミスリードで視聴者に日高が殺人者であるよう思わせていた。
その最たるものが、昔階段から落ちて死んだ近所のじいさんの話で、これは深読みしようとする視聴者ほど日高が殺人者として風邪で寝てるというアリバイを作り実行していた。つまり日高は過去にもすでに殺人を犯している、と考えてしまうに違いない。
もう一つは入れ替わり。
この物語は入れ替わりがなくても十分サスペンスとして通用する脚本だと思う。ところが彩子と日高の入れ替わりが起きたことで、視聴者は他にも入れ替わりが起きているケースがあるんじゃないかと疑わざるを得ない。例としては、東朔也と日高陽斗、東朔也と東の父、陸とクシュウゴウ、日高陽斗と女性、などなど入れ替わったまま更なる入れ替わりが起きたことまで想定するとかなりのパターンがあり大混乱となる。
ところが実際はシンプルに最初の彩子日高だけ。ここでも入れ替わりの可能性を示唆するようなシーンがあり、例えば奄美大島へ行った時に日高陽斗が東朔也と名乗っていたという証言は視聴者が入れ替わりが起きていた可能性を考えるのはしょうがないだろう。
あとは日高が彩子になってやけに女性らしくなったということ。
これについてはもう1つ、歩道橋への呼び出しの手紙が劇中で「ラブレターのような手紙」と表現されていたことと合わせて、日高の入れ替わりに女性が一人絡んでいる、あるいは事件の真相に女性が関わっているという見方をする原因になった。
実際のところは手紙を出したのは双子の兄であり、実際の人物と大きく違う人物像を視聴者にイメージさせるそういう表現をしたのだろう。日高が彩子になってやたらと女性らしさを出すようになったのも、日高が同一性障害を持ってる線もまだ捨てられないが、入れ替わりが行われたことをより分かりやすく鮮明にするための演出ということで間違いはなさそう。
さらに出演者が怪しいというパターン。
まず十和田元役の松尾愉や東の父役の浅野和之は知名度やキャリアのわりに出番が少なすぎた。さらに役名についても望月彩子に月、日高陽斗に日(と陽)が入っているように、天体というか自然に関係しそうな漢字が入っている役が多い。陸→陸 河原→河 五木樹里→樹 など。それとクウシュウゴウは殺人の指令を数字で出しており、被害者の名前にはみんな漢数字が入っていたがそれがまた役名にも多い。八巻→八 河原三雄→三 五木樹里→五 九十九→九 五十嵐管理官→五 十久川→十 など。
こういうのがあって東朔也の登場までは、登場人物が全員怪しい状態になっていた。
自分もあの八巻ですら怪しいと実は思っていた。まぁ論理的に怪しんでいた訳ではなく、あれだけのヘタレが全部演技でその正体が絶対悪みたいな人間だったら1番おもしろいかもな…と思っただけなんだけど。
なのでおそらく次の最終回でもこれまでの話をひっくり返すような大きな展開も謎ももう残ってはいないと思う。
だが、気になる謎がいくつかまだあるのも事実。
1、アメリカで日高が殺人の容疑者になったのはなぜか
これも素直に日高を殺人者に見えるためのミスリードと考えられるが、一応日高陽斗もまた兄と同じく殺人を犯しているサイコパスであるという可能性を残している。だがその場合、日高も過去に殺人をしているとなると日高が語る兄を思うシーンが台無しになるので、やっぱり濡れ衣か何かで疑われたのは九十九の陰謀か何かってとこだろうか。
2、東朔也が歯を探す時にSDカードを落とした
ここから何かまだ明らかになっていない新事実が出てくるか?それか東朔也の犯行の様子が映っていて、日高陽斗が殺人には関与していないと証明がされるというケースも考えられる。
3、第3話で殺された四方忠良も東の犯行か
日高が彩子に送った彩子の姿で四方を殺している動画。あれは日高の言動を考えれば、彩子の行動を制御するために作ったフェイクであることが濃厚ではある。ただ他の殺人、久米の息子殺しと最初の田所殺しでは、それぞれ東朔也が現場にいたシーンと日高が踏み込みそこに東がいた形跡が残されてシーンが出てきた。その一方で四方殺しだけはまだ現場に東朔也がいたというシーンが映像として出ていない。
あの動画はフェイクだとは思うが、どうやって撮った?死体は本物じゃない?とかいまだちょっとした謎。
4、入れ替わりの謎
実は9話でもあまり入れ替わりがなぜ起きたか、詳しくは明かされていない。日高も最初の入れ替わりが偶然起きたようだが、2回目は確信をもって元に戻ったような感じだった。
まぁ、入れ替わりが起きたこと自体は非科学的なことなので明確な説明がなかったとしてもいいんだけど、ひとつ懸念していることがある。
それが、死ぬ間際に陸と東朔也が入れ替わってないか、ってこと。
最終回の予告を見て一番気になっているのは陸の表情がおかしかったこと。
そして上の入れ替わりの謎。どうしたら入れ替わりが起きるのか。視聴者からすると同じ条件、つまり月・石・歩道橋・手錠・階段から落ちる、そういう条件が重なって初めて成立するように見えるが実はまだその確証はない。
実は陸が心臓マッサージをした時に2人が重なり(上に乗り)強い衝撃が加わる。それで入れ替わりの条件を満たしちゃったりしていないかが心配である。
これも考え過ぎかもしれないが、予告編の他のシーンはだいたいどんな話か予想はついたが、陸が虚ろな表情をしていたシーンだけは想像できなかった。いや何か悪い予感しかしなかった。
その辺も含め最終回で何が語られるか、今日たのしみに見たいと思います。